馬車の旅②
また、やっぱり戻ってきた。
一直線の道のはずなのに、どうしてまたここに戻ってくるのだろう。
進んでいるのは前方のみだし、決して後退もしていない。
見える景色も違うし、状況として違う場所にいる事は確かであるが、
"戻ってきている" 感覚もまた確かな実感としてここにあり、
気付くとまたここにいる。
それは凄く苦しい事であり、伴う感情は、落胆、不安、そして、恐れの感情。
その恐れは、何か対象への恐れではない。
"やっぱり"と少しずつ諦めへと向かっている事への恐怖感。
なんとなくまた、ここに戻ってくる予感は、心の片隅にもずっとあり、
そんな片隅の小さな気持ちが、全てを引き寄せていると言ったら、いかにもそれらしくは聞こえるけれども、
どんな道であれ、手綱を引いて馬車を進めているのは、紛れもなく、自分自身でしかないのだ。
結局、旅に迷いは尽きない。
行き先に迷い、来た道を迷い、そこから現在地を疑い、自己を見失う。
最後は道を外れて路頭に迷うか、はたまた答えを見つけるかなんて分かる事は出来ないけれど、
どうせ迷って、やっぱりまた戻って来るのなら、時には手綱を緩めて、馬の本能赴くままに進路を委ねてみてもいいのかもしれない。
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