雨、雨、雨のち・・
ポトン。ポトン。
濁りに染まった雫が、
天から滴り落ちる。
大地はぬかるみ、
熱の力は泥へと埋もり、
残った煙が、
厚いベールとなって、
また空へと広がっていく。
最後に残存するのは、
結局いつもの、小さな浮遊物。
突き刺す根は居場所を失い、
色も無く、
声も無く、
香りも無く、
細く短く、また衰退していく。
さて、ここから翔ぶのか、
翔ばないのか。
まるで、渦巻くように曲がりくねった迷路を彷徨い続けるように、
あなたは何度も何度も、
暗雲漂う空を、下から覗き、
その背負った翼を、
前から後ろへ、
上下、左右、
開いて、閉じて、
また、開いて、閉じてとバタバタさせて、
その場で、羽ばたく事を躊躇い続けている。
まるで奥歯でじっくり、何かを噛みしめ、そしてその味を確かめ続けるように・・。
それは昇ったものも、思わず上から下へと崩れ落ちていくかのような、とてつもなく苦くて、しょっぱい味。
ぶつかるような、大きな音を立て、
堅い一つのものさえ、
向こうとこちらに分断させていく。
裂けた傷から、漏れ出していくもの。
妨げられて失われる輝き。
秩序?原理?
それは抗うもの?
それとも、そのまま流れていってしまうもの?
正しい理解の欠如と共に、
心は揺らされていき、
緊張なのか、弛緩なのかもよく分からぬ渦が、グルグル、グルグル回り出していく。
頭が痛い。
目眩がする。
ご飯が美味しくない・・。
あなたにとって、夜はちゃんと眠る為の時間になっていますか?
季節は今、梅雨真っ只中。
外の世界も、雨。雨。雨。
そしてまた、雨が降る。
過ぎ去るばかりのお日様恋しい時間に、心の中に滴るものも、少し濁りの混ざった、苦くて、しょっぱい涙雨ばかりかもしれないけれど、
でも天と地との間で、何かが巡り流れていくというのは、ただそういう事であったりもする。
例えば春夏秋冬、
4つの季節の間に12の"月"があり、
その12の月の間に
365個の"日"があって、
その365個の日の間にある、沢山の分や秒の集まり一つ一つにさえも、
4つの季節の巡りのような、バイオリズムが備わっていると捉えてみれば、
きっと、そこにあるどんな些細な要素もまた、大きく波打つように、常に行ったり来たりを繰り返し推移していくもの。
それこそ、上に行ったり、下に行ったり、右に行ったり、左に行ったりもしていきながら。
もし、その動きに疲れて、それを痛みとして感じる程に、陥るものから抜けられない状況があるのならば、
今は一旦動きを止めて、
背中の羽根をおろし、
自らゆっくりと大地へと還っていく、
そんな少し怠けた時間があったとしても、それもまた、私達の巡り巡る要素の一つとして、循環していくのではないだろうか。
そのまま肩の力を抜いて、
ゆっくりと大地へと身を預けていってみよう。
そこにあるのは、紛れもなく"母なる大地"。
全ては認め、愛され、そして受け止められていく。
今度は、耳を澄まして聞いみよう。
"シトシト"
"シトシト"。
雨音の余韻が、開いた指先から、あなたを労わるように浸透していく。
まるで"父なる空"が、
私達と一緒に、泣いてくれているように。
・・・。
・・・。
何だか少し瞼が重たくなってきて、眉間の辺りに、トロ〜ンと温かいものが広がるような、不思議な感覚。
それは両目の周りを優しく包み、
やがて鼻の奥から、
頬全体へと広がっていき、
口の中を通って、
ゆっくりと喉を潤したら、
最後に、胸の奥の方へとスーッと溶けこんでいく。
・・・。
・・・。
ポツン・・。
ポツン・・・。
どこからともなく、また雫が落ちる。
"あ〜ここにあったんだ"
何となく、そんな感覚も湧いてきて、懐かしい気持ちや安心した気持ちが、爽やかな風のように吹きこんでくる。
その雫は、甘くて、豊潤で、心の中をたっぷりと満たしてくれるもの。
喉の奥から、幸せな味覚が拡がって、
鼻の穴から、フワ〜っとその香りが抜けていくと、
閉じた瞼の奥では、
彩り豊かな、お花畑が広がっていく。
中心に咲くのは、
赤い三角?
黄色い四角?
花びらが、1枚、2枚、3枚、4枚・・
どれもが楽しそうに踊っているのを眺めていると、不思議と、根っこの部分にも精気が戻ってくるようだ。
時には、厚い雲のベールに覆われ、何がどこにあるのかなんて、分からない状況があるかもしれないけれど、
だけど、どんなにぶつかるように離れていったものも、
やがて、曲がりくねった道の途中、
必ずどこかで、また交わる時が来る。
それは、時に傷つけ、
傷つきあいながらも、
決して支配する事も、
支配される事もなく、
それは常に補い、
支え合い、
お互い自分にとっての、
大切な"居場所"へと向かっていくように。
いつまでも、羽ばたく事を、
躊躇い続ける必要は無い。
まるで雨のち晴れで、綺麗な虹のアーチが、その場所へと架かっていくように、
それらはやっぱり、
天と地との間の、
ただ、それだけの事として、
巡っていく事なのだから。
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